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今回の青天を衝けの論語

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会員のカトケンです。

選挙開票のため、いつもより放映時間を前倒しした大河ドラマ「青天を衝け」に久しぶりに論語が出てきた。

「子曰く、富と貴きとは、これ人の欲するところなり。その道をもつてこれを得ざれば、処らざるなり」と。

「金と地位とは、世間の人が誰でも欲しがるものだ。自分は不正な手段にうったえてもこれを得ようとは思わない」という意味になる。

三野村利左衛門が「踏み込んではいけないところに踏み込んだのでは?」と意味深なことを言っていた。

続けて「貧しきと賤しきとは、これ人の悪むところなり。その道をもつてこれを得ざれば去らざるなり」

その意味するところは「貧乏と無名、これも世人のきらいなものだ。自分は才能があるのに、めぐり合わせで貧乏と無名の境遇にいたとしても恥ではないから、無理にそこから逃れ出ようとはしない。そういう外面的、物質的な生活条件よりは、大切なのは内面的、精神的な生活である」

訳がズシンと心に響く。孔子は続けて「君子、仁を去りて悪にか名を成さん。君子は食を終ふる間も仁に違ふことなし。造次にも必ずここに於いてし、顚沛にも必ずここに於いてす」と。

「いちばん大切なのは仁であって、立派な人はこの仁という徳、そういう境地を去ってどこに名を求めるところがあろう。君子は食事の間も心を忘れず修養する。慌ただしいときも、狼狽えるようなときも必ずそうすべきだ。それほどに思いをこらしているのだから、金と地位なんてこれに比べると大した問題ではない」と言うのである。

これは『論語』里仁編の一節。総選挙の開票日に当たったのは偶然だろうが、この国が市場経済を始めた時期の物語をきっかけに作者の訴えたいことが観ている者に伝わってきた気がした。

また、孔子は「貧しくして怨むこと無きは難く、富みて驕ること無きは易し」(憲問篇)とも言っている。誰しも貧乏はイヤだが、誰しも富を手にすれば心にスキが生じる。すなわち仁を忘れる。富を否定はしないが、それを得る各自の規範こそが問われているということなのだろう。

我が日本人は二度の開国を機会に経済ばかりを優先して、そこから逃れられずにいるのではないか。また、経済の元々の意味である「経世済民」の本分を忘れてはいるのではなかろうか。

たった一節の引用でも個人の振る舞いから国家の有り様まで様々な思いがめぐらされた。論語を通じて、また論語に親しんだ親子の物語を通して、人の生き方、目指すべき人間の資質を感じた。

今回、少し養育院が出てきたが、渋沢が明治とそれ以降の世で目指そうとしたものが何か、残りわずかとなった今後の展開が楽しみである。

なお、テキストは山本七平『論語の読み方』(祥伝社黄金文庫)のほか、今回は貝塚茂樹『論語』(講談社現代新書)も用いて(=写真)適宜改めた。後者はある程度編ごとにまとめられていて、且つ索引があって名言が探しやすい。


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