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Channel: 探墓巡礼顕彰会-墓碑調査・研究プロジェクト-
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土佐人の意外な人脈を有する片岡直輝・直温兄弟を思ふ

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会員のカトケンです。

毎朝通勤時に駅を降りると寝台特急サンライズが止まつてをり、土佐へ足を運びたい気持ちに駆られるが、なかなかこの社会的状況下では実現できないでゐる。

さうこうしているうちに土佐の土を踏んでから1年が経つてしまつた。昨夏高知駅前の観光案内所「とさてらす」でもらつてきた高岡郡「津野町偉人&歴史探訪」パンフレットをペラペラめくつてゐると、まるで双子のやうな瓜二つの兄弟の写真が目に入つた(=写真)。



旧葉山村(現高岡郡津野町。江戸時代は半山村)に生まれた3つ違ひの片岡直輝・直温兄弟である。

弟直温は昭和の金融恐慌を誘発した失言大蔵大臣としてつとに有名だが、小弟の場合、高知大学人文学部日本近代史のゼミで佐佐木高行日記『保古飛呂比』を読んでゐて、陳情のため高岡郡書記として上京し、伊藤博文に非凡さを見出された立志伝中の人物といふ印象がむしろ強い。

他方、今までさほど意識して来なかつた兄直輝の履歴を見てみると、海軍主計学校に学び、学友だつた斎藤実首相、以前このブログで紹介した土佐人武田秀雄(海軍機関中将、三菱造船会長)、島村速雄海軍元帥(=墓写真。青山霊園1種ロ8号1-14側5番甲)らとの友情は生涯続いたといふからその人脈に驚かされる。



直輝は語学力を買はれ、海軍大臣西郷従道の補佐官として渡仏、3年の滞在の間に原敬(首相。東京駅遭難=写真)、仙石貢(土佐人、土木学会長。後藤象二郎の下足番。青山霊園1種イ22号9側にある墓は、以前このブログで紹介した土佐人石本釒貫太郎の墓の向かい。この石本は西郷従道の通訳官を務めてもゐる。)、岩下清周(後述)とは特別強い絆で結ばれたといふ。



さらに父片岡孫五郎の土佐勤王党時代の同志、河野敏鎌内務大臣(万寿弥。青山霊園1種イ11号11側に墓)の秘書官も務めてゐて、これまた有名な歴史上人物との接点が伺へる。

関西財界で重きをなし、阪急電鉄や宝塚歌劇団を作つた小林一三(松岡修造のひいぢいさん)を見出した岩下清周(前述した仏滞在時に親交)との交流やその岩下の作つた北浜銀行の経営危機救済に直輝が奔走してもゐる。

土佐人川田小一郎(三菱から日銀総裁。染井霊園1種イ4号17の2側に墓)に見出されて日銀大阪支店長を務めた後には、大阪ガス、堺ガス、広島ガスの役員を務めてゐることは、わが国ガス事業の開発に功績を上げたと評される所以であらう。

一方で直温も日本生命社長を務めるなど兄弟うちそろつて実業界でも活躍してゐることが分かる。

日生では創業者の一人として第二代社長に直温が収まつてゐるが、創業一族である弘世家には雑司ヶ谷霊園の記事で紹介した旧幕臣の家から出た成瀬隆蔵の息子現が養子に行つてをり、日生第五代社長を務めてもゐる。

この弘世家は近江国(現滋賀県)愛知川の旧家で、中井弘滋賀県知事時代に同県警察部長を務めた直温により築かれたであらう人脈を想起させる。

直温は土佐では国民派出身の政治家として知られるが、今まで見てきた如く様々な足場を基礎に加藤高明内閣の商工大臣、若槻礼次郎内閣の大蔵大臣に道が開けたのは、土佐人脈から云へば必然だつたのかも知れない。

大学当時、友だちに原付を借りて葉山や梼原を訪れたとき、片岡兄弟の生家にあつた石碑(顕彰碑か)しか記憶にないが、一昨年に生家がリニューアルオープンした。

片岡直輝・直温生家

それにしても、昭和2年(1927)4月13日金融恐慌により大蔵大臣として直温が矢面に立たされてゐる最中、兄直輝がこの世を去つた。その8日前に直温は兄直輝の見舞ひに関西へ下り、4日前に東京へ戻つてゐる。

そんな兄弟の墓を見にいま一度葉山を訪れてみたいと思ふ今日この頃である(写真=「津野町偉人&歴史探訪」パンフレット)。


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