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Channel: 探墓巡礼顕彰会-墓碑調査・研究プロジェクト-
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介良のえらいて逝く

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会員のカトケンです。

小弟が例会のお手伝いしている土佐史談会関東支部の支部長鍋島高明(たかはる)さんが7月18日胃癌で亡くなられた。85才だった。

平成28年ころから6年ばかりにわたって支部長を務められ、親しみやすいお人柄と独特のしゃがれ声で理事や会員に慕われた。

本を出すたびにお送りくださり、ライフワークである『介良のえらいて』(五台山書房)は増補すること2度。

自身の出身地である介良の偉人たちを取り上げ、こんな偉い人がおったかえ?この人は介良の人やったかね!と狭い地域からよくこれだけの人材が出たものだと読むたびに感心させられた。例えば橋詰延寿や澤本楠弥など。

今でこそ高知市東部に属する介良(けら)はかつて土佐国長岡郡に属し、武市半平太姉の嫁ぎ先で、その息子小笠原和平(保馬)の墓がある。小弟なんぞ、墓を訪ねて自転車で行ったものだが、どうもその時背中に重いものを背負って帰ってきてしまったようで、霊感の強い人に「血だらけの鎧被った人が上におったで」と後で言われて背筋が寒くなったことを今でも覚えている。

それもそのはず、小笠原の墓へ行くには源希義(頼朝弟)の墓を通らざるを得ず、平家に撃たれた浮かばれない霊が滅多に訪れない珍客に付いてきた(この場合、憑いてきたと書くべきか)としてもおかしくないからだ。

そんな思い出のある介良ご出身の鍋島さん。早稲田政経を卒業し、日本経済新聞社へ。昭和58年には編集委員となられた。かつて気になって日経新聞の連載「21世紀の経済人」を書いたのは鍋島さんではないかと尋ねたことがあった。

その記事に土佐出身、鈴木商店の番頭金子直吉が取り上げられていたから、『大番頭 金子直吉』(=写真。高知新聞社)の著書がある鍋島さんが執筆されたのではと思ったが「あの頃(20世紀末)、そんな特集がようあったきねぇ」と一蹴されたことを思い出す。



ジョン万次郎研究者の北代淳二さんの後を受けて3代目の支部長を務められ、平成17年から今まで15年間例会(講演会)を絶やさず続けて来られたのは、この支部長の功績によるところが大きい(昨年はコロナで開催できなかったため15年)。

それというのも、鍋島時代は今まで安泰だった例会の会場を追われる一大事件が起きた。いつも無償で会場を貸してくださるところの責任者が急に方針を変えたからだ。否、休みの日にわざわざ会場を開けに出てきてもらうようなことを無理にお願いしてきた経緯もあって、我々はその理由に対しもっともとの結論を出さざるを得なかった。

だが、そこからが鍋島さんの腕の見せどころで、支部長代行の谷村さんを伴って別の会場で例会が開けるよう道筋をつけてくださった。

支部長という立場にありながら、そのような地道な仕事を実現してくださる縁の下の力持ちだった。

そのおかげでちょうど例会での発表を割り当てられていた小弟も憂いなく務めることができたのが、一昨年の青山に眠る近代土佐人群像の時。

しかも、その際鍋島さんの書かれた『土佐史談』(昭和史特集、第254号)の論稿から、濱口雄幸総理の東京駅遭難時に山地土佐太郎が偶然目撃していた逸話を披露することができ、一遍に2度御恩をこうむった、ありがたい親分だった。

代表的な著書は先に挙げたもののほか、このブログでも紹介した『高知経済人列伝』や『日本相場師列伝』など多数。ホームページ「鈴木商店記念館」の編集委員の一人として金子直吉の功績を分かりやすく説いていた。

この金子は、福沢桃介が『財界人物我観』で土佐国が財界に送り込んだ偉人二人として岩崎弥太郎とともに挙げたもう一人の人物で、鈴木商店で采配を振るった大番頭。鍋島さんの著書によると、なんと渋沢栄一から大日本製糖社長を打診されたが断っている。その理由がまたあっさりしていて面白い。詳しくは著書をご覧されたし。

鈴木商店記念館

また先々月、武蔵野市立図書館へ行って伝記のコーナーを見ていたら鍋島さん著『岩崎弥太郎 海坊主と恐れられた男』(河出書房新社)が目に止まった。「なんや、この人岩崎弥太郎書いちょったがや。こんな身近に専門家がおったとは知らんかったっちゃあ。」と2度驚かされたことだったーー

まだまだお話したいことがあった鍋島さん、心よりご冥福をお祈りいたします。

平成28年「6/17,18土佐、讃岐掃苔」のブログ記事参照(舞台挨拶されている写真に写っているのが鍋島さん)

6/17,18 土佐、讃岐掃苔~土佐史談会創立100年記念行事の出席を兼ねて~

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