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Channel: 探墓巡礼顕彰会-墓碑調査・研究プロジェクト-
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「幕末遊撃隊-己巳150年」に参加しました

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会員のカネコです。
6月2日(日)に三十六臣会様主催の「幕末遊撃隊-己巳150年」に参加してきました。
昨年、当会が幹事を務めた流星忌「箱館戦争関係者慰霊祭in谷中」に来て頂いた池内様が発起人となられ、開催決定と共にご案内を頂いておりましたので、大変楽しみにしていました。

遊撃隊からは伊庭八郎や人見勝太郎(寧)などが箱館戦争に参戦しており、流星忌幹事としては是非この会に参加せねばと思っていました。

私個人としては箱根戦争での遊撃隊の戦いについては不勉強で、知見はあまりありませんが、この箱根戦争については小学生の時に見た大型時代劇スペシャル『五稜郭』(日本テレビ・1988年放送)を見た時に初めて知りました。

このドラマでは舘ひろしが伊庭八郎を演じ、壮絶な最期を遂げるシーンがありました。伊庭八郎はクロードチアリ演じるフランス軍人カズヌーブと木古内で一緒に奮戦していました。八郎はカズヌーブにピストルの弾が残りを聞くと、カズヌーブは「アトイッパツ」と答え、八郎は「最後まで取っておけ」と告げました。二人で木陰で休息していると、カズヌーブが「ワタシシナナイネ、オモマリモッテル」と言い、箱根で奮戦する八郎の錦絵を見せ、八郎は「悪い冗談だ」と言いしばし眺めます。ここで鈴木瑞穂の格調高い語りで、八郎が箱根の戦いで片腕を失うほどの奮戦をして、江戸では錦絵になる程の人気になったことが解説されます。しばし錦絵を見ていた八郎は何を思ったか、急に錦絵を口にくわえ、片手で掴み破ります。するとカズヌーブは「ナニヲシマスカ!ワタシ、ニホンノミヤゲニカイマシタ。ケッコンシテコドモウマレタラコレヲミセマス。コレガニッポンノサムライダ、オマエノチチ、コノヒトトイッショニタタカッタンダ」と言い、続けてフランス語で「日本に武士道があるならフランスにも騎士道があるんだ」と叫びます。「オレハオマエトトモダチニナリタカッタンダ、ワカッテンノカハチロー、トモダチニダ」と言うと、八郎は「フランスにも侍がいるんだな」とつぶやきます。カズヌーブはさらに「ハチロートモダチダ、トモダチ」と叫びます。するとそこに西軍の砲弾が八郎に直撃します。草むらに飛ばされた八郎がカズヌーブの名を叫び、カズヌーブが駆け付けると、瀕死の八郎は「土産をやるぞ、さっきの錦絵の代わりだ、俺の、俺の首を刎ねろ」と言います。カズヌーブが「ノーノーオレニハデキナイヨ」と言うと、八郎は「これが日本の武士道だ」と言い短剣を抜き腹に突き刺します。苦しみながら「カズヌーブ、おぬしも武士なら介錯しろ」「1発」と言うとカズヌーブは涙ながらに立ち上がり、ピストルを八郎のこめかみに突き立てると、八郎は「よし、撃て」と言い、カズヌーブはゆっくり引き金を引きます。

この伊庭八郎の最期はあくまでドラマ上での創作ですが、大変印象深いシーンとして焼き付き、箱根戦争はこのシーンとセットで伊庭八郎が片腕を失った戦いとして私の脳裏に深く焼き付けられました。

さて、前置きが長くなりましたが、「幕末遊撃隊-己巳150年」は箱根町立郷土資料館での講演会と、臨済宗金湯山早雲寺境内にある遊撃隊戦死士墓前での奉納演武と法要の2本立てで行われました。

13:00から行われた講演会は箱根町立郷土資料館学芸員高橋秀和先生による「戊辰戦争の舞台、箱根の様子と人々」から始まりました。箱根戦争の推移や、戦場となった村の人たちの動きや被害に関するお話しがありました。この話の中で出た湯本村名主福住正兄のことに興味を持ちましたが、幸いにもこの後、早雲寺にてそのお墓を詣でることができました。

続いては東海大学馬場弘臣教授による「戊辰箱根戦争とは何だったのか?-幕府遊撃隊と小田原藩の苦悩-」で、遊撃隊と戦った小田原藩の動向についての詳しいお話しがありました。小田原藩は勤王を表明していたものの、佐幕に寝返り、さらに新政府軍に恭順した上で、遊撃隊と戦うという一転二転した不可解な行動をしています。その理由について、藩主大久保忠礼の出自から遡り、幕末の政局や軍役負担など、箱根戦争に至るまでの小田原藩の動向から探り、箱根戦争直前の翻意に至る状況を史料に基づき丁寧に解説をされました。
最後に馬場先生が話された昭和13年(1938)の林忠崇の談話が大変心に響きました。林忠崇が語るには、自分は天皇に逆らう気は全くなく、薩長のすることが腑に落ちなかった、すべては臣下の争いだで、早く天皇に接近するものが政略上官軍と称し、他を排して賊軍と言うのだと思う、どうも将軍の取り扱いが腑に落ちなかった、何の野心もなかった、といったことであり、これは東軍の身を投じた者の共通の想いではなかったかということです。

近年は官軍・賊軍という言い方はあまり聞かなくなり、西軍・東軍という呼称を多く聞くようになりましたが、かつて、東軍側は賊軍という扱いを受けていて、私の父母の郷里二本松でも古老の方は賊軍の汚名をそそぎたいということをよく言っていたものです。しかし、戊辰戦争を東軍として戦った人たちは決して天皇に弓ひく「賊」では無く、薩長を中心とする西軍のやり方への不満、徳川家の処遇に対する不満から、やむを得ず、錦の御旗を掲げた西軍と一戦を交えた訳です。各藩・各人が戦いに至った経緯はまちまちで、様々な事情がありましたが、この林忠崇の談話の内容は東軍として戦った人々の多くが思っていたことにように思いました。

それと、馬場先生の講演で特筆すべきことは配布されたレジュメです。本文中にも書かれていましたが、後から読み直せるよう、講演内容をそのまま文章化したものになっていて、これは恩師を見習ったとのことです。
当会の巡墓会のレジュメも当会が師事している釣洋一先生がレジュメは後から読めるものを作るようにと仰っていたので、会の後に読めるよう詳細なものを作ってきました。時には3、40ページにも及びましたが、そうすることで、聞き逃したことや、聞いている時には分からなかったことが後から復習できます。
馬場先生のレジュメは話し言葉そのままという画期的なもので、当会もスタイルとも違ったもので、こういった形もあるのだなと大変参考になりましたし、当会が「後から読み直せるレジュメ」というスタイルで作ってきたのは正しかったのではないかという後押しをして頂いたような気持ちにもなりました。

参加者の記念品として配られた『幕末遊撃隊己巳150年 記念読本』も大変充実した内容で、特に池内様作成の遊撃隊の隊士名簿が圧巻でした。これだけ隊士が網羅された名簿は他には無いと思います。
名簿を眺めると、気になる人がいました。第二軍の阿部四郎三郎(四郎五郎)とあるのはおそらく、阿倍四郎五郎家の当主ではないかと思いました。阿倍四郎五郎家は以前、当会の染井霊園周辺寺院巡墓会で本妙寺にある墓所を案内しました。阿倍四郎五郎正之を祖とする家で、加藤清正の家とも姻戚関係となっており、加藤家改易後にその遺品を引き継いでいた家でもあります。そのご縁で、一度ご子孫の方にもお会いしたことがありますが、太平洋戦争で一切が焼失して、ご先祖のことは殆ど分からないとのことでした。
他には第一軍の前橋藩(富津村百姓)とある人物が12名いますが、これは安政5年(1858)から慶応3年(1867)まで富津陣屋を警備していた二本松藩が足軽として登用した地元農民で、前橋藩が富津陣屋の警備を引き継いだ際に、彼らも引き継がれています。二本松藩の足軽として9年間の任務を果たした彼らですが、この箱根戦争の後、かつて仕えた二本松藩が壮絶な戦いの末落城するなど想像できたでしょうか。

二本松藩の富津警備については以前当会ブログにも書いています。

富津と二本松藩

箱根戦争や遊撃隊について詳しく調べたことはありませんでしたが、図らずも自分が過去に調べたことと接点があり、大変興味深いものがありました。

馬場先生の講演の後に、少しお時間を頂き、不肖私より昨年の流星忌開催の御礼とガイドブック『探墓巡礼 谷中編~箱館戦争関係人物を歩く~』の案内をさせて頂きました。事前に池内様にお願いして、配布資料の中に本のチラシも入れて頂きました。
貴重なお時間を頂きましたことを改めて御礼申し上げます。

その後、早雲寺に移動し、15:20より遊撃隊戦死士墓前で伊勢亀山心形刀流赤心会様による奉納演武が行われました。心形刀流は伊庭八郎の祖伊庭秀明が開いた流派です。
二刀流の演武など、大変な迫力があり、貴重な体験をしました。



その後、碑前にて法要が行われ、ご子孫や関係者による焼香がありました。
最後は人見勝太郎(寧)のご子孫である人見寧則様からのご挨拶がありました。涙ながらのお言葉には人見様の想いが詰まっていて、心を打たれました。
人見様には流星忌にもお越し頂いており、今回再会できご挨拶できたことは嬉しい出来事でした。



会が終わった後は、当会のクロサカさんと早雲寺の探墓をしました。
以前来た時は有名な小田原北条氏五代、飯尾宗祇、今大路道三の墓は見ていましたが、講演の中で出ていた福住正兄や福住家と共に湯本村の名主を務めていた小川家、北条家の後裔と伝わる仙台藩士の家など初めてみるものもあり、充実した探墓巡礼となりました。

遊撃隊と箱根戦争に関する知識を深められ、様々な方とお話しや情報交換ができ、私にとり大変有意義な一日となりました。
この会を主催した池内様はじめ三十六臣会の皆さまや、講演をされた馬場先生、高橋先生のご尽力に改めて敬意を表するとともに、皆さまの今後ますますのご活躍を祈念いたします。
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